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【DevLOVE】「LeanStartupNight - The LeanStartup Story -」に参加してきました

こんばんは? でしょうか? アオヤマです。

今宵は DevLOVE という開発者の集いの1イベント「LeanStartupNight - The LeanStartup Story -」に参加して来ました。

image Amazon.co.jp: リーン・スタートアップ ―ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす: エリック・リース, 伊藤 穣一(MITメディアラボ所長), 井口 耕二: 本

イベントでは、昨年翻訳版が出版された「リーン・スタートアップ」の考え方やテクニックを参考にしたサービス開発の実践例が紹介されました。

この記事ではイベントの様子やその実践例や思ったことなどについて簡単に紹介してみたいと思います。

『LeanStartupNight』の名に相応しい華やかな会場

会場はモバイルコンテンツの提供を始めとして様々な事業を展開する 株式会社サイバード の保有する会場施設であるTheatre CYBIRDでした。

イベントへの参加は40人程度とそこそこの規模でしたが、まるで収録スタジオのようなシアター形式で収容されている上、効果的なライトアップを含め印象的な舞台が用意されていました。

また、お話の後のグループダイアログではサイバードの方からの 軽食の差し入れ(!) までご用意されており、会場が さながら 架空のスタートアップのキックオフ のような雰囲気に包まれていました。

お話そのものも貴重なものでしたが、グループダイアログでは参加者それぞれの思いを自由に語り合うという、夢の様なひとときを過ごせたと思います。DevLOVEさんやサイバードさんを始めとした運用に関わった方々には感謝しきれません。

開発者として理解すべき「リーン・スタートアップ」の本質

DevLOVE という開発者の集いの中では「開発を愛し、開発を前進させる」というコンセプトに沿って 開発者による開発者のための実践的学習 を目的としたイベントが数多く開催されております。例えば、特定の開発手法や考え方などに対し、ワークショップやグループダイアログが行われていたり、などです。

そのため本イベントも単なる書籍からの受け売りを共有するのではなく、 実践からのフィードバックの共有 を目的としています。

しかし、そもそも「リーン・スタートアップ」は 無駄を徹底的に排除する という マネジメント哲学 であり、本来は開発手法とも開発思想とも関わりがありません。

登壇頂いた 進藤 圭 さんも、自身が開発者ではなく企画を作り発注する側であることから「 DevLOVE そのものに対してアウェーの雰囲気を感じる」とおっしゃっていましたし、そもそも新藤さんの主張は以下のようなものでした。

  • 限られたリソースでスタートアップを試みる以上、『まずコードを書く』という方法は無駄になりうる
  • 成功のヒントは ものづくり 以前にあり、コードを書かずとも日々改善は行える

確かに 開発を愛する者達 に対し 何とも挑戦的ですが(w)、1つのコミュニティに対して外から刺激を送り込もうという意図が感じられ、開発者としての私も非常に共感を覚えました。 また、外製に頼らざるを得ない新藤さんの立場からの率直かつ筋の通った主張であるため、反論の余地は殆どありません。

ただし、リーン・スタートアップ と アジャイル開発プロセス には 実践と検証を繰り返すことで効率的にサービスを作り上げる というかなり近しい概念が息づいています。新藤さんの立場は開発者のそれとは異なるかもしれませんが、アジャイルの価値に気付いていれば十分に理解できる領域です。

  • ユーザを特定し、課題を特定し、価値の実現を検証し、ユーザからの価値の理解を試みることで、失敗しうる原因を特定する
  • 本格的な開発を始める前に十分なヒアリングと計測を行うことで仮説と実験を繰り返し、まず『成功基準』まで持ち上げる
  • 開発が完了する前に知らせ、反響を検証することで小規模で利益とリスクを把握する。結果うまく行くようなら 実績ベースで初期投資を行い、掛け算的に規模を拡大する

上記のいずれの方法も、低コストかつ低リスクで新しい領域に踏み込もうとする際に非常に有効なものです。コードを書くことを生業とする人間であっても、理解に努めても損はありません。

活動原理が対称的でありながら 手法は共通する二者の事例

今回 イベントの構成の上で最も興味深かったのは、登壇頂いた 進藤 圭 さんと 志田 裕樹 さんの 活動原理の対称性 です。

進藤さんは 大企業の新規事業部門の責任者 という立場から、 「失敗できない新領域」に踏み込む ため、 利益駆動 でユーザのニーズとそこへのサービスの有効性を探り出します。検証の結果、上手く行かないと判断された場合は 大幅な方針転換 を行います。「脈絡のないサービス展開(※ご本人曰く)」を続け、結果として有効なサービスを導き出します。

対して志田さんは 伸び悩むベンチャーサービスに支援やテコ入れを行う立場 として、 「価値を活かし切れない既存事業」に踏み込む ため、 ニーズ駆動 で アーリーアダプタや非アクティブユーザから真のニーズとそこへのサービスの有効性を探り出します。真のニーズを満たすことで後から利益が追いついてくる ことを信じ、 サービスの本質は維持したまま で様々な角度からのアプローチを試みます。

極端な言い方をするなら、前者は 『ドライ』なビジョナリー 、後者は 『ウェット』なビジョナリー です。

これは当然、どちらが良い悪い、優れている劣っているという話ではありません。所属する組織や目的によって全く異なる行動原理を持ちながらも、 限られたリソースで理想とするサービスをリリースする という 共通の目的を持っていたために(細かい実践内容こそ異なりますが)手法も共通する ということに不思議な感覚を抱いてしまったのです。

『熱が引いた』今こそ もう一度自分を見つめ直そう

世間では景気が回復したとは言われていても、これまでに起こった 様々な『アクシデント』による爪痕 はまだまだ深く残っており、経済が安定しているとは言い切れない面もあります。また当然、この先にも様々な問題が発生しうるでしょう。

また同時に、 進化を続けるテクノロジーへの(幻想にも似た)過剰な期待 も徐々に収束しているように感じられます。ライブラリやツール・プラクティス・プロセスなどが成熟しつつあることで言わば『熱』が程よく冷め、冷静に現実を見据えられる段階に差し掛かっているのです。

その冷静になった、リソースの限られた今だからこそ、スタートアップを起こすにあたって自分(アントレプレナー)が抱く 真の目的 ≒ 真の活動原理 を自らが導き出し、その目的を達成するために最適な手法を選択していくべきなのだと思います。それは『リーン・スタートアップ』なのかもしれませんし、それ以外のその先にある新たな手法の集まりなのかもしれません。

追記(2013/07/18 12:07)

進藤 圭 さんの発表スライドがUPされております。

追記(2013/07/18 17:26)

志田 裕樹 さんの発表スライドもUPされておりました。

SkypインタビューとKA法による分析 from shida