【広告】ビールブランド広告変遷 + 金麦2013夏の交通広告は『一味』違う
わんばんこ。アオヤマです。
今年も『金麦の夏』がやって参りましたね…。
まあ私は アルコール はおろか ビール から比較的縁遠い人なんですけど。まあそれでも季節ごとに楽しみにしているものがあります。それが 金麦 の広告刷新です。
金麦 では 映画『武士の一分』で本格的メジャーブレイクを果たした 檀れい さんの 強力なキャラクター と 普遍性溢れるシチュエーション 、そして 効果的なクリエイティビティ を携えて2007年から6年以上に渡り様々な広告を展開して来ました。
この記事では従来のビールブランド広告のイメージから一歩抜けた 金麦広告 の面白さについて、色々とご紹介したいと思います。
※ なお、筋金入りの金麦広告ファンで本題の2013夏の交通広告についてすぐ知りたいという方はこちらをクリックしてワープして下さい。この先1200文字くらい色々書いてしまったので。
日本のビールブランド広告の変遷
そもそもビールというものは(何度も言うように私はあんまり嗜まないんですけど)、少なくとも日本においては、高度経済成長期以降に大衆化され、特に夏、 キンキンに冷えたビールをわざわざ暑い場所で暑い思いをして飲んで楽しむ ことが好まれるため、 アウトドアのイメージが強いアルコール飲料 として浸透してきました。
そのため、ビールブランドの広告においてもアウトドアのシチュエーションが前面に押し出されていました。特にその代表といえばバブル全盛期に絶頂を極めた 海をバックにした水着キャンペンガールのポスター広告 でしょう。よく居酒屋に貼られているそれです。 力強い男性が家の中で黙々と嗜む というイメージも無かったわけではありませんが(ウイスキーにも日本酒にも共通してますね)、
- (シズル感のある水着が目に入る)
- 「健康的で爽やかで可愛い!」
- (シズル感のあるビールジョッキが目に入る)
- 「ビールも美味しそう!」
的なダイレクトな欲求刺激が最も効果的でした。そういう時代だったんですね…。
アサヒビール キャンペンガール時代の藤原紀香さんのモノマネをしているガリットチュウの福島さん
そのイメージ戦略もバブルが終わることで消費が衰え、更に2000年代に入り、 各種ビールの個性が打ち出しにくい という至極当たり前の理由で急速に消えて行き、今はあまり残っていません。
アウトドアからインドアへ
そこで近年のビールブランド広告では、ビールそのものの個性は勿論のこと、
- Who(誰が)⇒ あなたが
- What(何を)⇒ ビールを
- When(いつ)
- Where(どこで)
- With whom(誰と)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
という5W1H的なものを明確に提案し、消費行動を喚起させる必要が出てきました。(まあこれはビールブランドに限った話じゃないんですけどね)
サントリーにおけるインドアアルコールの系譜
そんな中、サントリーのビールブランド広告ではインドア志向かつ家庭的なシチュエーションのTVCMが作られていました。
私の認識が間違っていなければ、その始めのCMが1990年代初期の和久井映見さん出演の『モルツ』です。
場所のバリエーションこそあれ、家庭の中で、家庭の味で楽しむというシチュエーションも含まれてますね。
また、ビールではないんですが、更に遡ると1980年代の大原麗子さん出演のウイスキー『レッド・オールド』で家庭的かつアグレッシブな奥様が描かれています。
大原麗子 サントリー レッド・オールドCM集 - YouTube
実は、これが『金麦』に最も近いシチュエーションだったりするんですよね。もしかして、実際にレッド・オールドのリメイクが狙いだったりして…。
家庭的 + ナチュラル志向全開 の檀れいの登場
で、ここでようやく本題の『金麦』です。
金麦 の広告において最も特徴的なのは ビールの特徴とも言えるシズル感を封印 し、 季節ごとの爽やかさ・親しさ・懐かしさを喚起させるシチュエーション作りに徹した ことです。 広告を担当されたクリエイティブディレクターの 黒須 美彦 さんはコンセプトを「 家で待っている理想の妻 」と回答しているようですが、 世界の抽象感 を守ることで普遍性のある表現に見事仕上がっています。
説明を重ねてもアレなので、普段意識せずご覧になっていた方は以下の公式サイト内のアーカイブをご確認下さい。2007年からの最新作までの全てが紹介されていますので、改めてその変遷をご確認頂ければと思います。
広告紹介:CMアルバム2007年| 麦のうまみ、かがやく。 サントリー 金麦
オールナイトニッポンのテーマ曲、Herb Alpert's Tijuana Brass の「Bittersweet Samba」のコーラスアレンジに乗せて、 家庭的イメージを超えた普遍性のある親密感 が描かれています。
また、アグレッシブな面で言えば 2013年版のカツオはいりまーす篇 が1つのピークになっています。 カツオを手づかみのまま坂を登ってくる とかありえねえだろ!
また、通しで確認すると 始めはおしとやかさを残していた檀れいが、徐々に雑になり、馴れ馴れしくなっている のがお分かり頂けるでしょうか。個人的にはこの変遷を確認するだけでご飯何杯も行けます。
季節感を掻き立てる、『金麦』交通広告 における ビジュアル + テキスト のバランス
さて、またまたここにきて真の本題である 『金麦』交通広告 です。 金麦 は交通広告においてより明確にクリエイティビティな表現が発揮されています。
コツコツと継続された挑戦的表現
実写背景を外す
特に交通広告においては、金麦のイメージカラーである ロイヤルブルー が背景の殆どを占めています。高級感を残しながらもどこか明るく親しげな印象を表現しています。
テキストを外す
そこにあるはずのテキストを外し、そこにビジュアルを持ってくるのも金麦交通広告の特徴だったりします。
商品を外す
金麦そのものが定着した2008年度以降は 金麦の缶そのものが消える ようになりました。
夏になると埋め尽くされる詩表現
1年の内でも特に売り出し時期になる夏になると、アグレッシブな印象を与えるためか 金麦 には テキスト表現を前面に押し出した 広告が出現します。例えば2012年夏の交通広告がこちら。
ルーズイズセクシー - Shikalog から拝借
金麦の夏には、海に行こう。汽車に乗って、砂浜を蹴って。金麦の夏には、髪を切ろう。伸びた分の、少し先まで。金麦の夏には、あの人に会いにいこう。暑さにかまけて、いいわけにして。金麦の夏には、思いきり休もう。うでまくりして、えへんと胸はって。金麦の夏には、金麦の夏には、
金麦広告表現における 普遍性 を季節感とともにテキストで見事に表現しています。また、わかり辛くならない範囲で漢字を省くことで読み砕きやすくなり、ゆとりが生まれています。説明はすれど、あくまでも 具体的なイメージは消費者に委ねている のです。読んでいて意識が遠のきそうなほどの詩的表現ですね。
そして2013夏
で、先月くらいから展開されている広告がこちらです。
金麦の夏、つばいろのむぎわらぼうし、しろしすなとあおいそら、らんでぶぅ、うみのむこう、うなじ、じかにしいたびにーるしーと、となりまちのはなびのおと、とろけるねったいや、やきそらまめ、めがねのひやけあと、とけいまわりのせんぷうき、金麦の夏
「金麦の夏」以外全てが 平仮名 になりました。それも しりとり 。「うなじ」「とろけるねったいや」の辺りで 気がそれてる 感じがしなくもないのですが、これもまた普遍性と季節感を残す詩的表現の継続ですね。
これからもこの先も、金麦の広告には目が離せませんね。つーことで。
(2013/07/20 23:50 追記)
「金麦はビールじゃねーよ」というツッコミが入りましたが、確かに金麦は 第三のビール であって ビール風味の発泡アルコール飲料 であってビールではないですね。でもビールから縁遠い私は特に区別してません(おい)。